ぼくんち

坂本順治監督。原作は西原理恵子による高知の漁村で繰り広げられる淡々としつつも哀愁漂う日常を描いたものですが、映画化に当たり、若干設定エピソードが変更されて一つのストーリーができあがってました。(以下ネタバレあり)

まず、単純に感想を言うと予想外にかなりおもしろかった。原作のマンガは西原ののんびりとした絵とマッチして独特の世界観を作っていたので、映画化って言ってもどうなるんだかとか思ってましたが、それなりにうまくアレンジされていて、マンガの世界とは違うけど、映画は映画でまた独特の世界観を作り上げていました。はじめの方に明かりのついた家へ子供が帰ってくるシーンがあるんですけど、それだけでも「子供の頃はこんな風に明かりのついているのが見えたよな」と感動できました。観月ありさも子役も名演という感じではないんですが、木訥とした感じと幼稚園の出し物みたいな演技が段々見ているとはまってきました。

ストーリーは原作に軽く改変が加えられていて大人への道であったり、子を送る母の気持ちであったり、独自の味付けが加わっているんだけど、それはそれなりに良かった。二太がこれから船着場へ行くというシーンで、まず我が子を送る観月の孔雀の求愛ポーズがあって感動的で、その次は二太が砂浜を歩くと気色悪い黒服の男達がいてその前を通らなくてはいけないというこれからの不安や恐怖を思わせるようなシーンになるんだけど、でも本当はその気味悪い男達は雨の降る中、二太が進むのを傘をさして道をつくってあげていて、あぁこれは旅立ちだということであったという展開なんだけど、これらの見ている側も感動したりドキドキしたり、テンションが激しく動くシーンが一息に流れるように続いて、ある意味映画の醍醐味的なものが見れてとても満足できた。

原作をいじってここまでおもしろくしたというのは、それだけでも凄いと言えるけど、そういう味付け意外でも全体に漂う子供的な感覚の数々はとても価値のあるものだと思う。

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