津田大介『だれが「音楽」を殺すのか?』

昨日書いたtodoに関しては、教習所の効果測定というテスト受けてこようとしたら、授業予約する時に使うカードを忘れて電車に乗ってしまって、うっざーと思ったのですが、結局、教習所行くのを止めて、電車乗り換えて吉祥寺行って津田大介だれが「音楽」を殺すのか?』を買って読んできました。
率直な感想としては結構面白かったです。レコード輸入権CCCDファイル交換ソフト音楽配信サービスとネットでもかなり話題になった問題について、一通りのあらましをまとめたもの。一時期、僕もちゃんと知っておかないとマズイよなと思ってネットをうろうろしてお勉強していたので、概要は知っている話が多かったんですが、小さい情報を集めて、頭の中に全部放り込んでおいただけだったので、本にまとめてくれた気がして良かったです。紙媒体の本のありがたさとも言えますが、一月後にはまた元に戻ってそうでもあります。

中身について言うとまず、レコード輸入権についての運動があった時に感じた距離感をこの本の中でも感じた。輸入権問題の時には、自分にも直結する問題であったものの、運動している人達はコアな音楽ファンばっかりで自分とは違う人達だなあと思いました。この時は、単に自分が他の人が先に盛り上がっているのを見ると冷めてしまうというパターンをやったのかと思いましたが、この本を読んで著者の津田氏や他の人の取るスタンスが、サッカーのサポーターみたいな立場であって、業界と自分たちが協力しあってこの業界盛り上げていくぞって話で、分かる話ではあるけれど、サポーターみたいな立場になる気のない自分には遠く感じたんだと分かった。もちろん、別にサポーター的立場を強調したいわけではないんだろうけれども、運動の端々にそういうニュアンスの言葉があったりすれば自然と気持ちは遠のいていく。実際に、あの運動の時、自然と音楽関係者の人が中心になってやっていくという方向に進んでいったわけだけど、もっとビートたけしとか、そこまでいかなくても一般的な知名度のある人を抱き込む方向にいった方が良かったんじゃないのかと思う。まあ勝手なことを書いているが、もし自分が運動とかすることあったら、近い人よりもむしろ関係ない人を呼び込む方向で努力をしようということですな。まあ輸入権問題の時はそれなりにでかい運動だったから異種な人達がそれなりに集まってたんだろうけど、問題のでかさから言えばもっと集まってもおかしくなかっただろうということ。

立場的な問題では、ケチつけてますが、個々の意見については自分と同じものが多く、逆にすんなり読めすぎて気持ち悪かったりもしました。この手の話というのは自分に都合の良い話ばっかり正しいと主張してないか、と気になるものですので、本読む時にはどちらかというと自分の考えを相対化させてくれるような、きっちりした視座からの意見を読みたかったりするので。僕がどのような意見なのか具体的に言うと、レコード輸入権-反対、CCCD-導入も仕方ない、ファイル交換ソフト-違法、音楽配信サービス-業界自由度を高めて早くアメリカみたいにやってくれ、とこんな感じです。CCCDについては各社撤退してしまっているし、ソニーのプレイヤーもMP3対応になったことで業界の方向も見えてきている所ではありますが、一応以前は完全に複製できないということには抵抗あるものの、自由に複製が出来るというのも問題が多いと思っていたので仕方ないかなと思ってました。CCCDが出てしばらくは様子見みたいな気分でしたが、そのあと輸入権の問題とか出てきて、全体的に音楽業界のこと考えた時には、アメリカでは音楽配信サービスが安くする方向で成功しているとか聞いていたので、どうしても音楽業界のどんくさく能力のない所にばっかりむかついてしまうというパターンにはなりましたが。

ちなみに、本全体ので一番面白かったのが、ファイル交換ソフトから音楽配信サービスへという音楽をめぐる産業構造がダイナミックに変わっていくところの話。流れを追って読めたことで一段と面白く感じました。そもそも僕自身が、一人一人が頑張って業界を支えていきましょうという話よりも、客を集めよう、需要を喚起しようという目的の経済活動によって、消費者も企業もハッピーになって世の中の構造が変わっていくという、資本主義は自由で素晴らしいって話の方が好きだっていうことですけど。音楽配信に関してはナップスターは会社でしたけど、その後はフリーのファイル共有ソフトだったりするのがまた面白い所。まあ資本主義バンザイだけではやっていけないだろうとは思っていますよ。僕自身、再販制度支持者ですし。

所で日本でもCCCD撤退、MP3認めるってことで、配信サービスにも新たな動き出てくる所だろうとは思うんですけどどうなってるんでしょうか?業界が動くとなればJASRACも変わらざるをえないでしょうし、全体が良い方向にいきそうな気もします。ただ、アメリカでAPPLEの配信サービスITMSが開始されてレコード業界に落ちた金額は60〜80億円程度と案外たいしたことないそうなのでどうなるか分からない所ですが。でも配信サービス用の会社作って、それなりに話題になるレベルで黒字になるものであれば株式公開してガッと金集めて儲かったって話になりそうな気がする。

本全体としてはいい本ですよ。約1600円と凄いお買い得感あります。奥付で人の気を逆撫でするように著作権について主張してるのはアホかと思いますが。この本読んでて思い出したのは、昔マロンさんが一人で日本の中で三本の指に入るレベルの音楽配信サービスやってたんだよな(笑)というのを思い出しました。
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